初恋の味が忘れられなくて。
私は今でも
初恋の彼女と過ごした日々が忘れられなくてチーズケーキを作り続けています。
私は元々恋人もいなければ、女性と話したことも少ない人でした。
女性と話していても君は優しい人だね。と言われて、恋に発展することもない人生をずっと送っていました。
私は中学生時代にイジメに遭ってしまい、
その体験から人のことを信じられなくなっていました。
そのため人とうまく馴染むことができなくて、
社会人になるまで女性とお付き合いした事がありませんでした。
そんなコミュ障であった私が人生で初めて恋に落ちました。
会社で一緒の職場に勤めていた派遣社員の女性です。
私は一年間ほど遠目から眺めていました。
そんな彼女が派遣社員の任期が来るとのことで翌年に退職することを知りました。
私はそのことを知ってショックでした。
もう彼女の笑う姿が見えないことに。
そこで
私は彼女に告白をするために
マッチングアプリを一ヶ月間やってみたり
合コンに三ヶ月間チャレンジしてみました。
全ては彼女に告白するためです。
そして
退職後に彼女に連絡を取ることができ、何回かデートに誘うことができました。
そのデートの中で
彼女が甘いもの好きであることを知りました。
それを知った週末には
東京の秋葉原までオーブントースターを買いに行きました。
私は今までケーキを一度も作った事がない。ケーキの道具すらも持っていない。なんなら泡立て器が道具なのか機械なのかも知らない。そんな状態のまま、試行錯誤しながらも翌週のデートのためにケーキを作りました。
ケーキの外見は不格好だったと思います。
それでも彼女は笑顔で「美味しいね。これ。」と言ってくれて、公園で一緒にケーキを食べました。
その後
何回かのデートを重ねて彼女と付き合えることになりました。
しかしながら、
付き合ってみて初めて
実は彼女は「ケーキ屋の娘」であることを知りました。
そのことを知ってから、
あの時、公園で一緒に食べた時の彼女は
自分の頑張りに合わせてムリに褒めてくれていたのかもしれない。と思い始めました。
私はそれからも
めげずにケーキを作り続けました。
パウンドケーキ
ショートケーキ
フルーツタルト
アップルパイ
レアチーズケーキ
等
10種類以上の色々なケーキに挑戦しました。
その度に
彼女は笑ってくれていたのですが、私の中では納得がいきませんでした。
そんな中、付き合って一年が経とうとした辺りに、
バスクチーズケーキにチャレンジしてみました。
コンビニのスイーツ売り場にも並べられている「バスチー」
あの有名スイーツに挑戦できうるほどの経験が今の私にはあるのかもしれないと思い
それまでのケーキ作りの経験から、
既存のケーキレシピにアレンジを加えつつ、彼女のために糖分少なめに仕上げました。
そのバスクチーズケーキを
彼女に初めて食べてもらったことは今でも鮮明に覚えています。
ケーキを口に入れた瞬間に「美味しい!」と彼女が言ってくれて、二口目には身体がぴょんぴょんしていて、とにかく子供みたいに喜んでいた姿は昨日のことのように思い出せます。
残念ながら、
今はその彼女とは別れていますが、
今でも時々、
彼女との初恋の思い出の日々を思い出したくて
チーズケーキを作り続けています。
これは
そんな彼女との
甘くて切ない初恋の味のするチーズケーキです。